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2022年10月号の答え

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■■自社製品に類似する特許への対応方法■■(橘和之)
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自社において企画設計中の新製品と技術的に似ている特許の公開公報(特開2019-123456号公報)を偶然に発見した。どのように対応したらよいか。次に挙げる対応方法のうち、適切でないものはどれか。
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1.企画中の設計を変更する。
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2.発見した公開公報を詳細に読んで、実際に新製品が特許に抵触するかどうかを確認する。
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3.審査請求されているかどうかを確認する。
- 【答え】 1と2
1.→正しくない。
製品が特許に「似ている」というだけで、製品が特許に抵触するとは限りません。特許の内容(権利範囲)は、公報の【特許請求の範囲】という欄に記載されている内容で特定されます。
まずは、その特許の内容と製品の内容とを十分に比較検討し、本当に特許に抵触するかどうかを確認することが必要です。特許に抵触していなければ、企画中の設計を変更する必要はありません。-
2.→正しくない。
上記1.解説を踏まえると、2.の記述はいっけん正しいように見えるかもしれませんが、正しくはありません。
「公開公報」というのは、審査の結果として特許が成立しているか否かによらず、特許出願の出願日から18ヵ月後に漏れなく公開される公報です。これに対し、特許の審査が終わって特許が成立すると、「特許公報」というものが別に発行されます。
【特許請求の範囲】の記載内容は、審査の過程で修正される可能性がありますので、審査が終わった後に発行される「特許公報」を読まなければ、実際に成立した特許の内容を正しく把握することはできません。
ですので、公開公報を詳細に読む前に、特許が既に成立しているかどうかを調査して、特許が成立している場合には「特許公報」を詳細に読んで、実際に新製品が特許に抵触するかどうかを確認することが必要です。 -
3.→正しい。
上記2.で解説した調査の結果、特許がまだ成立していないことが分かった場合、次は審査請求されているかどうかを確認します。
特許の審査は、出願をしただけでは行われません。「審査請求」という別の手続を行うことが必要です。審査請求は出願日から3年以内に行わなければならないことになっていて、期限内に審査請求をしなかった出願は取り下げられたものとみなされます。
問題文にある「特開2019-123456号公報」は、2019年に公開公報が発行されたことを意味します。上述した通り、公開公報は出願日から18ヵ月後に発行されますので、出願は2017年または2018年に行われたことが分かります。
ここでお分かりの通り、2022年の現在において、出願日から既に審査請求期限の3年が経過していますので、もし審査請求をしていなければ、この出願は取り下げられたものとなっています。この場合、この出願が特許として成立することはあり得ませんので、なんら気にする必要はないことになります。一方、審査請求が行われている場合は、現在審査中で、いずれ特許として成立する可能性があるということになりますので、注意が必要となります。
審査中なのでまだ特許の内容は確定していない状態ですが、どのような内容で特許が成立する可能性がありそうかをある程度は予測することが可能ですので、予測を立てながら必要な対策を講じることが望ましいと言えます。ただ、あくまでも審査中であり、特許として成立しない可能性もありますので、慌ててすぐに設計変更をしたりする必要はありません。 -
以上は基本的な考え方を示したものです。実際は、経験を積んだ信頼できる弁理士と相談しながら事を運ぶことが肝要です。
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