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2021年2月号の答え
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■■【今月のクイズ】■■(古野裕介)
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企業Aがある発明について特許権を得ていたとします。この場合において、企業Aとは別の企業Bによる「企業Aの特許権」の侵害が成立するためには、企業Bがその発明を「業として実施」していることが必要です。逆に言えば、企業Bが、企業Aの特許権に関連する何らかの行動をとったとしても、それが「業としての実施」でなければ、特許権の侵害は発生しない、ということになります。従って「業としての実施」が何であるかは重要であるところ、知的財産に関する業務に携わっている方を除き、「業としての実施」を正確に理解している方は少ないのではないかと思います。
そこで今回は、「業としての実施」についてのクイズを出したいと思います。「業としての実施」について、少しでも理解が進めば幸いです。 -
【問題】
以下の行為は「業としての実施」となるか。○か×で答えよ。 -
1. 企業Bが、企業Aの特許発明が実装された製品を正規のルートで購入し、リバースエンジニアリングを行う行為(リバースエンジニアリング自体が違法行為かどうかを聞いています)
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2. 企業Aがラジオについて特許権を得ている場合に、企業Bの社員が、趣味として特許技術を利用してラジオを製造して自宅に設置し、個人で楽しむためにラジオ放送を受信する行為
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3. 企業Aが接着剤を製造するための特殊な製造方法について特許権を得ている場合に(ただし企業Aはあくまで製造方法について特許権を持っており、接着剤については特許権を持っていない)、企業Bが自社工場においてその特殊な製造方法で接着剤を製造し、製造した接着剤を一般に販売する行為
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4. 企業Aがラジオについて日本国で特許権を得ており、中国で特許権を得ていない場合に、企業Bが、中国において企業Aの特許技術を用いて生産されたラジオを日本国に輸入する行為
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5. 企業Aがプログラムについて特許権を得ている場合に、企業Bがそのプログラムが実装されたアプリケーションを、アプリケーションダウンロードサービスを利用して一般に販売する行為
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■■【 答え】 ■■
1 → ×(「業としての実施」ではない)
一般に、リバースエンジニアリングは、正規に購入した製品を分解したり、解析したりするものであり、新たに流通に乗せて利益を得るというものではないため、発明の実施には相当しません。ただリバースエンジニアリングで得た知見は、特許権(だけでなく、意匠権や、著作権)で保護されている場合があるため、当該知見を活用する場合には、注意が必要です。-
2 → ×(「業としての実施」ではない)
本問のように、個人的家庭的な実施は「業としての」実施には当たりません。 -
3 → ○(「業としての実施」に該当する)
製造方法に特許がなされている場合に、その製造方法で製造する行為のほか、その製造方法で製造された物を流通に乗せる行為も「業としての実施」に相当します。 -
4 → ○(「業としての実施」に該当する)
日本で特許された発明に係る製品を、日本国に企業活動として輸入する行為は、「業としての実施」に相当します。輸入元で特許権が発生しているかどうかは関係ありません。 -
5 → ○(「業としての実施」に該当する)
日本では、物体ではないプログラムについても、特許権が有効に発生します。そして、プログラムに係る発明について特許権が成立している場合に、そのプログラムが実装されたアプリケーションをオンライン上で提供する行為も「業としての実施」に相当します。
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