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2021年4月号の答え

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■■【今月のクイズ】■■(橘和之)
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【問題】
次のうち、考え方として正しくないのはどれでしょうか。
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1. スマホアプリの情報処理に関して新しい機能を開発した。でも、既存技術の組み合わせに過ぎないから、たぶん特許はとれないだろう。特許出願は諦めよう。
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2. スマホアプリの情報処理に関して新しい機能を開発したが、既存技術の組み合わせに過ぎないから、特許はとれないだろう。でも、特許よりも高度性が要求されない実用新案なら大丈夫かもしれない。そうだ、実用新案の出願をすることにしよう。
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3. スマホアプリの情報処理に関して新しい機能を開発した。こんな機能を持ったアプリは今まで市場で見たことがない。これは絶対に特許が取れるに違いない。よし、特許出願しよう。
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■■【 答え】 ■■
1 → 正しくない
特許を取得するために満たすべき要件のうち、主なものに「新規性」と「進歩性」があります。新規性とは、既に知られている公知技術とは異なる新しさが必要であるという要件です。進歩性とは、公知技術から容易には想像できないことが必要であるという要件です。この2つの特許要件を満たせば、基本的には特許を取得することが可能です。
さて、スマホアプリの情報処理に関して開発した機能が既存技術の組み合わせに過ぎないとしても、その組み合わせに係る構成自体が公知でなければ、その組み合わせについては「新規性」があると言えます。
また、既存技術どうしを組み合わせることが、既存技術から容易に想像できない場合には、「進歩性」もあるということになります。
情報処理に関して毎年多くの特許が成立しますが、これらの殆どは、既存技術どうしの組み合わせに関するものです。既存技術Aと既存技術Bを単に「寄せ集めただけ」の技術「A+B」では進歩性が認められないかもしれませんが、多少なりとも+αの味付けを加えたものであれば、進歩性が認められる可能性は十分にあります。-
2 → 正しくない
実用新案で保護される対象は、物品の形状、構造または組合せに限られます。実用新案の場合、特許ほど高度な進歩性が要求されないことは事実ですが、スマホアプリの情報処理は物品の形状、構造または組合せに相当するものではありませんので、実用新案出願することはできません。 -
3 → 正しくない
特許要件の新規性・進歩性を判断する際に基準となる公知技術は、市場に存在する製品だけではありません。論文や特許公報、新聞、雑誌、ウェブサイトなど、出願時よりも前に公開されている情報は全て公知技術として扱われます。従って、自社開発した機能を今まで市場で見たことがないとしても、その機能が論文や特許公報などを通じて既に公開されてしまっている場合には、新規性または進歩性がなく、特許を取得することはできません。
ちなみに、開発した機能が他社製品やあらゆる媒体に公開されていない場合であっても、特許出願前に自ら公表してしまった時点で新規性が失われますので、その点は十分にご注意ください。
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