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2022年4月号の答え
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■■【中小企業の知財関連の課題】■■(橘和之)
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中小企業庁が発行している「中小企業白書2020年版」において、中小企業による知的財産権の活用状況に関する課題がいくつか挙げられています。次のうち正しいのはどれでしょうか。
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(1)中小企業は全企業数の99.7%を占め、付加価値額も52.9%を占めているが、特許出願件数については総件数に占める割合が14.9%と極めて低くなっている。
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(2)商標登録出願件数も、中小企業による出願件数は総件数の38.6%に過ぎない。
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(3)1つの製品やサービスについて、特許に加え、意匠や商標を含めた複数の知的財産権により複合的な保護を図る「知的財産権ミックス」の取り組みが、大企業に比べて中小企業では遅れている。
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■■【 答え】 ■■
正解は(1)と(3)です (1)中小企業による特許出願件数は年々増えてきていますが、まだ十分には特許を活用できていない状況のようです。
もっとも、大きな割合を占める大企業による特許出願の中には、技術を公知化することで他社による権利化を防ぐことのみを目的とした出願も存在し、実際には審査請求をすることなく権利化されないものも少なくありません。
これに対し、中小企業の場合は、特許出願後に速やかに審査請求を行っている割合が大企業に比べて多くなっています。自社にとって重要なものに絞って特許出願をしているものと推察されます。ただ、私の実務経験を踏まえると、中小企業は特許をもっともっと活用できる潜在力を持っているという実感があります。-
(2)問題文にある38.6%という数値は、中小企業ではなく大企業による出願件数の割合です。
商標の場合、中小企業による出願件数は全体数の61.4%に及んでおり、自社のブランド価値を保護する商標権の取得については意識がある程度高いことが推察されます。
中小企業は、製造業に比べて小売業・サービス業の割合が大きいため、特許出願に比べて商標出願の方が多くなっているというのは頷けます。弊所にご依頼いただく出願案件も、特許より商標の方が圧倒的に多い状況です。 -
(3)特許と商標の両方を出願している企業は、大企業では18.9%に対して、中小企業では6.4%に過ぎません。特許、意匠、商標の全てを併せて出願している企業になると、大企業は14.9%に及びますが、中小企業は1.6%のみとなります。
特許、意匠、商標はそれぞれ保護対象が異なり、単独の権利だけでは保護の範囲にも限界があります。知的財産権ミックスは非常に有効な知財戦略ですので、中小企業も積極的に取り組むことが望まれます。
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